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あおじろいつき
蒼白い月
徳田 秋声
「サンエス」1920(大正9)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,440 字 · 19 页
今日が新婚旅行のようなもんだっせ」雪江はいそいそしながら、帯をしめていた。顔にはほんのり白粉がはかれてあった。
「ほう、綺麗になったね」私はからかった。
「そんな着物はいっこう似あわん」桂三郎はちょっと顔を紅くしながら呟いた。
「いくらおめかしをしてもあかん体や」彼はそうも言った。
私たちはすぐに電車のなかにいた。そして少し話に耽っているうちに、神戸へ来ていた。山と海と迫ったところに細長く展がった神戸の町を私はふたたび見た。二三日前に私はここに旧友をたずねて互いに健康を祝しあいながら町を歩いたのであった。
終点へ来たとき、私たちは別の電車を取るべく停留所へ入った。
「神戸は汚い町や」雪江は呟いていた。
「汚いことありゃしませんが」桂三郎は言った。
「神戸も初め?」私は雪江にきいた。
「そうですがな」雪江は暗い目をした。
私は女は誰もそうだという気がした。東京に子供たちを見ている妻も、やっぱりそうであった。
「今度来るとき、おばさんを連れておいんなはれ。おばさんが来られんようでしたら、秀夫さんをおよこしやす。どないにも私が面倒みてあげますよって」彼女はそんなことを言っていた。