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あおじろいつき
蒼白い月
徳田 秋声
「サンエス」1920(大正9)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,440 字 · 19 页
舞子が一番綺麗だそうです」
波に打上げられた海月魚が、硝子が熔けたように砂のうえに死んでいた。その下等動物を、私は初めて見た。その中には二三疋の小魚を食っているのもあった。
「そら叔父さん綸が……」雪江は私に注意した。釣をする人たちによって置かれた綸であった。松原が浜の突角に蒼く煙ってみえた。昔しの歌にあるような長閑さと麗かさがあった。だがそれはそうたいした美しさでもなかった。その上防波堤へ上がって、砂ぶかい汽車や電車の軌道ぞいの往来へあがってみると、高台の方には、単調な松原のなかに、別荘や病院のあるのが目につくだけで、鉄拐ヶ峰や一の谷もつまらなかった。私は風光の生彩をおびた東海の浜を思いださずにはいられなかった。すべてが頽廃の色を帯びていた。
私たちはまた電車で舞子の浜まで行ってみた。
ここの浜も美しかったが、降りてみるほどのことはなかった。
「せっかく来たのやよって、淡路へ渡ってみるといいのや」雪江はパラソルに日をさえながら、飽かず煙波にかすんでみえる島影を眺めていた。
時間や何かのことが、三人のあいだに評議された。
「とにかく肚がすいた。何か食べようよ」