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あおじろいつき

蒼白い月

徳田 秋声

「サンエス」1920(大正9)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,440 字 · 19 页

青空文庫

彼女はその真実の父母の家にあれば、もっと幸福な運命を掴みえたかもしれないのであった。気の弱い彼女は、すべて古めかしい叔母の意思どおりにならせられてきた。

「私の学校友だちは、みんないいところへ片づいていやはります」彼女はそんなことを考えながらも、叔母が択んでくれた自分の運命に、心から満足しようとしているらしかった。

「ここの経済は、それでもこのごろは桂さんの収入でやっていけるのかね」私はきいた。

「まあそうや」雪江は口のうちで答えていた。

「お父さんを楽させてあげんならんのやけれどな、そこまではいきませんのや」彼女はまた寂しい表情をした。

「どのくらい収入があるのかね」

「いくらもありゃしませんけれどな、お金なぞたんと要らん思う。私はこれで幸福や」そう言って微笑していた。

もっと快活な女であったように、私は想像していた。もちろん憂鬱ではなかったけれど、若い女のもっている自由な感情は、いくらか虐げられているらしく見えた。姙娠という生理的の原因もあったかもしれなかった。

桂三郎は静かな落ち着いた青年であった。その気質にはかなり意地の強いところもあるらしく見えたが、それも相互にまだ深い親しみのない私に対する一種の見えと羞恥とから来ているものらしく思われた。