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たでくうむし
蓼喰う虫
谷崎 潤一郎
「大阪毎日新聞 夕刊」1928(昭和3)年12月3日~1929(昭和4)6月17日<br>「東京日日新聞 夕刊」1928(昭和3)年12月3日~1929(昭和4)6月18日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 110,066 字 · 216 页
ただ当人の話したいろいろのうその中で、初めて会った時に歳を十八だと云ったのは、或はそれだけがひょっとすると本当に近いのかも知れない、なぜなら実際に見たところでも今年でせいぜい二十ぐらいの若さにしか思えないし、容貌のわりに云う事やする事が早熟なのは、そう云う数奇な生い立ちをした多くの少女に逃れられない運命であるから。
別に何処と云うきまった巣もなく囲ってある者もない要には、日頃妻から得られないものを充たしてくれると云う点では誰よりも一番好みにかなったせいか、知り合ってから今日までの二三年のあいだと云うもの、いつもの移り気な性分にも似ずこの女に依って最も多く独り寝のあじきなさを慰められて来たのだが、彼はその理由として、日本人をめったに入れない家であるのが隠れ遊びに都合がよいこと、茶屋へ行くよりも時間や費用が経済であること、女と自分自身とを動物として扱うときに、外国人同士の方が互に耻を忘れやすく、それだけあとで気が病めないこと―――などを、もし人に聞かれれば挙げたであろうし、自分でも努めてそう信じて来たのである。しかしこの女を「四肢と毛なみの美しい獣」として卑しみ去ろうとする意志の下には、その獣身に喇嘛教の仏像の菩薩に見るような歓喜が溢れているところをなかなか捨て難く思う心が、案外強く根をおろしている事実を、我