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くらのにかい
蔵の二階
豊島 与志雄
「思索」1949(昭和24)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,351 字 · 27 页
カヨは憐れむように言う。
「あんなお粗末な家をつくって、どうするつもりでしょう。こんど戦争になったら、ひとたまりもあるまい。それに比べると、うちは安心ですよ。」
再び戦争が始まるものと、彼女は確信してるのである。戦争になれば、この前と同じ情況になるものと、思ってるのである。だから、土蔵は最も安全なのだ。
隣りに、鉄管を扱う家があった。径二十センチほどの長い鉄管を、トラックに満載してどこからか運んで来、空地にそれを積み重ね、暫くすると、またトラックに満載して、どこかへ運び去るのである。その家が、新たに建て増しを始めて、白井家の敷地とすれすれに地割りをした。カヨはその方へ気を配った。
「家というものはね、地境いから軒先三四尺は離して建てるものですよ。お隣りはどんな建て方をなさるか知れないが、地境い一杯に建てられるといけないから、前以て注意しといてあげなさいよ。」
三四尺のことなら、どうだってよい、と桂介は思った。
「三四尺といっても、火事の時にはたいへん違います。」
隣家の火事の場合を、カヨは考えてるのである。こちらで新築はしないつもりでも、現在の土蔵の住居に関係があるのだ。