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ふきもんどう

蕗問答

山本 周五郎

「冨士」大日本雄辯會講談社、1940(昭和15)年7月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,898 字 · 14 页

青空文庫

新九郎はそれからしばらくのあいだ、能代地方の新田開発の事で秋田を留守にし、秋の初めになって帰ってきた。……すると屋敷内に新しい小屋が二つできていて、夜の更けるまでしきりに人々がなにかやっている様子である。

――また浪江がなにか始めたな。

そう思って知らぬ顔をしていたが、ある夜のこと、そっと小屋を覗いてみると、蕗が山のように積んである中で、大釜にどんどん火を焚き浪江がせっせと蕗を小さく切る側から、家士たちが茹であげたのを大きな箱に詰めている。

――蕗なんぞどうするのか。

不審に思った新九郎は、やがて小屋の中へ入っていった。

「たいそう急がしいようだな」

「まあ……旦那さま」

「いやそのまま続けていい。……だがなにを拵えているんだ」

「蕗漬と申す物でございます」

浪江は羞しそうに微笑しながら答えた。

「こういう大きな蕗は江戸や上方では珍しゅうございますから、このように輪切りにいたしまして、砂糖漬けにしたうえ、まず江戸表へ送って売らせてみようと存じます」

「すると菓子代りだな」

「秋田名物という風にしますと、都の人々は珍しい物を好みますから、きっと評判になることでございましょう」