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あしかり

蘆刈

谷崎 潤一郎

「改造」改造社、1932(昭和7)年11月号、12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 39,413 字 · 78 页

青空文庫

女中が二人つき添っておりましてその三人がお遊さんのうしろから代る代る扇子であおいでおりました。父は叔母がお遊さんに会釈をしましたのであれはというと粥川の後家さんだという話で、つれのお嬢さんはお遊さんの実の妹、小曾部の娘だったのでござります。己はその日、最初にひとめ見たときから好もしい人だと思ったと父はよくそう申しましたがいったいその時分は男でも女でも婚期が早うござりましたのに父が総領でありながら二十八にもなって独身でおりましたのはえりこのみがはげしゅうござりまして降るようにあった縁談をみんなことわってしまったからなのでござりました。尤も父もお茶屋遊びはいたしましたそうにござりましてその方面に馴染みの女がないことはござりませなんだけれどもさて女房にするとなるとそういう女ではいやなのでござりました。と申しますのは父には大名趣味と申しますか御殿風と申しますかまあそういったふうな好みがござりまして、いきな女よりも品のよい上型の人、裲襠を着せて、几帳のかげにでもすわらせて、『源氏』でも読ませておいたらば似つかわしいだろうというような人がすきなのでござりましたから芸者では気に入る