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そせい
蘇生
豊島 与志雄
「新小説」1918(大正7)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,974 字 · 31 页
あッ! と思うまに、深淵の底に取り残された自分を彼は見出した。もはやどうすることも出来なかった。彼は両手を胸の上に組んで、捩り合した。苦しいものが胸の底からこみ上げてくるのをかきむしりたいような気がした。
「慶子はどうしたろう、慶子は?」彼は身を※(「足へん+宛」、第3水準1-92-36)いた。
中西が静に彼の側に寄って来て、彼の手を握っていてくれた。それに気がつくと、彼はその手に縋りついた。
「中西!」
「ああ。」と中西は答えた。
「慶子さんは?」
中西は何とも答えないで、夜具の乱れたのを彼の肩にまとってくれた。それから何とか云おうとした。
「しッ!」と敬助はそれを遮り止めた。梯子段に人の足音がするようだった。耳を澄すと果して静かな足音が梯子段を上って来た。彼はその足音を知っていた。息を凝らしてその方を見つめていると、襖がすうっと開いた。慶子が立っていた。彼女はただじっと敬助の顔をまともに眺めた。彼は何か云おうとした。と俄にその幻がすうっと彼の胸の中に吸い込まれてしまった。金泥で笹の葉を描いた淡黄色の襖が壁のように閉め切ってあった。
彼にはぼんやり凡てのことが分った。