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そせい
蘇生
豊島 与志雄
「新小説」1918(大正7)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,974 字 · 31 页
と秋子は云った。
「もういいようです」と敬助は答えた。
暫く沈黙が続いた。
「兄が宜しく申しましたの。」
「御心配をかけてすみません。」
また沈黙が続いた。
「外はお寒いでしょう。」と敬助は云った。
「ええ、すこおし……。」
また沈黙が続いた。
その時中西は立ち上った。そして階下を下りて行った。看護婦は階下で食事をしていた。
二人になると急に感情がこみ上げて来た。敬助は身を起した。すると秋子は彼の手に縋りついた。
「兄さん!」と彼女は叫んで泣き出した。
それは彼女が敬助に向けた最初の呼名だった。然し二人はそれに自ら気付かなかった。
「兄さん!」と彼女は泣きながら云った、「兄さんは、生きていて下さい。私がお願いですから。」
「ええ生きます。」敬助は声を震わした。
「私は覚えていますの、」と秋子はまた云った、「姉さんが云ったことを。私は死ぬかも知れない、けれど高木さんは助けなければって。」
敬助は思わず身を引いた。壜の中に僅かしか残っていなかった劇薬のことが、初めて彼の脳裏に閃いた。
秋子は息をつめて彼の様子を涙の眼で見上げた。
「どうかなすって?」
敬助はその声に我に返った。