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そせい

蘇生

豊島 与志雄

「新小説」1918(大正7)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,974 字 · 31 页

青空文庫

看護婦が立ち上ってそれを取り払った。

室の中は明るくなった。眼がはっきりしてきた。と共に頭の中が急に薄暗くなってきた。意識の上に深い靄がかけているような気がした。凡てのことが夢のような間隔を距てて蘇ってきた。彼は眼をつぶった。そして静にその光景をくり返した。

凡ては底の無いような静けさに包まれていた。

――敬助は机に片肱をもたして坐っていた。慶子は彼の方へ肩をよせかけて坐っていた。二人の前には火鉢に炭火がよく熾っていた。夜はもうだいぶ更けているらしく、あたりはひっそりと静まり返っていた。何の物音も聞えなかった。二人の息さえも止まったかと思われる程だった。その時、急に慶子の呼吸が荒々しくなってきた。敬助は驚いて顧みると、彼女は眼を閉じて石のように固くなっていた。眉と眉との間に深い皺が寄っていた。それは彼女が何か苦しい思いに自分と自分を苛む時の癖だった。乱れた荒い呼吸が、小さな鼻の孔から激しく出入していた。敬助ははっとした。彼女のそういう様子のうちには或る強い恐ろしいものが籠っていた。

――「どうかしましたか。」

――何の答えもなかった。

――敬助は彼女の肩を捉えて激しく揺った。