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きょこうのはる
虚構の春
「文学界」1936(昭和11)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 54,586 字 · 108 页
当時二十歳、六尺、十九貫五百、紅顔の少年であります。ボートは大変下手でした。先輩ばかりでちいさくなっていました。往復の船中の恋愛、帰ってきたぼくは歓迎会ずくめの有頂天さのあまり、多少神経衰弱だったのです。ぼくが帰国したとき、前年義姉を失った兄は、家に帰り、コンムニュスト、党資金局の一員でした。あにを熱愛していたぼくは、マルキシズムの理論的影響失せなかったぼくは、直に共鳴して、鎌倉の別荘を売ったぼくの学費を盗みだして兄に渡し、自分も学内にR・Sを作りました。関タッチイはそのメンバーであり、彼の下宿はアジトでした。その頃、自殺を企て、実行もした元気のない塩田カジョーと知り合ったのです。タッチイがへまをしてつかまりました。タッチイは頑張ってくれたのでしたが、ぼくは、その前から家を飛びだしもぐっていた兄にならって、殆んど狂気しかかっているヒステリイの母をみすてて、ぼくも一週間、逃げ歩きました。家の様子をみにきたぼくは姉に掴りました。学資がなく学校も止めさせられ、ぼくは義兄の世話で月給十八円で或る写真工場につとめに出ました。母と共に二間の長屋に住んで。――ぼくは直ちに職場に組織を作り、キャップとなり、仕事を終えると、街で上の線と逢い、きっ茶店で、顔をこわばらせて、秘密書類を交換しました。