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きょこうのはる
虚構の春
「文学界」1936(昭和11)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 54,586 字 · 108 页
(一行あき。)勿体ぶるわけではないんです。そして、ゼイタクしているわけではありません。教師として、普通人の考えるが如き生活をひたすらしているのではありません。嘗て、君も私も若き血を燃やしたる仕事があった筈です。(文学ではないぜ。)それをです。そのためにです。それに、子供がうまれて以来、フラウが肺病、私が肺病(勿論軽いヤツ)で、火の車にちかい。(一行あき。)であるから、三〇で、がまんしてくれ。そして、出来るなら返して呉れ。こっちがイノチがけになってしまうから。(一行あき。)文壇ゴシップ、小説その他に於ける君の生活態度がどんなものかを大体知っている。しかし、私は、それを君のすべてであるとは信じたくない。(一行あき。)元気を出せ! いのちがけの……死ぬの……そんな奴があるか! 気質沢猛保。」
「悪習は除去すべきである。本郷区千駄木町五十、吉田潔。」
月日。
「言わなければならぬと思いながら言えない。夏休みになったら手紙をかこうと決心した。手紙をかき度い。かかなければならぬと、思いながらなぜかけないのかということを考えた。『人は人を嘲うべきものでない』と言って呉れても、未だかけなかった。