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きょこうのはる

虚構の春

太宰 治

「文学界」1936(昭和11)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 54,586 字 · 108 页

青空文庫

手紙がぼくを決める。手紙をかく決心がついた。明日から絵を一枚描く。そして一層決心をかためる。一週間で絵が大体出来る。それから蔦に行って手紙をかく。手紙をかかなかったら東京へ帰らない。どうなるにしても手紙をかいてからです。『青い鞭』創刊号うけとりました。私は実行します。創ったもの何もなく、ただこんな絵を描こうと思っただけで、貴方に認められようとし、実行しない自身に焦心していました。船橋から、帰る日、私への徹底的な絶望と思って私がかなしんだ、貴方の言葉は今、特に絶対必要なありがたい力をあたえてくれています。ピカソも、マチスも見方によっては一笑に付されることを実行している。私の、この頃描いた絵は実行でなく申し訳であったと思います。ぼくは長い長い手紙をかきたかったのだ。一分のスキもない手紙など『手紙が仲々出来ない』といったりしたことを千家君は誤解したらしい。手紙をかくと誓った日までは努力した。その日から君にものを言うに努力はない。一晩中よんでいられるような長い手紙をかこうと思ったのだ。ぼくは、いたちでない。ぼくは自分をりんごの木の様に重っぽく感ずることがある。