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にじとかんきょう

虹と感興

上村 松園

「大毎美術 第十一巻第一号」1932(昭和7)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,448 字 · 5 页

青空文庫

この天井絵は、べったり置かれたもので、それになかなか大きいものですから、これを見るのに、立っていては見渡しがつかないので、四方に段々を拵えて、看者はこれに上って下に見おろすようになっていました。

私もこの段々の上に立って見たのですが、実際恐ろしいほどの出来ばえのものです。

雅邦先生も、これを描く時には、必ずや亢奮的感興といったような気持で、描かれたものに違いありません。またそうでないと、あれだけのものは出来ないでしょう。

高い、深い感興によって描いたものは、なかなか二つとは出来かねるものだと前に述べました。これについて一つの話があるのです。

私は、かつて文展に出した「月蝕の宵」というのは、やはり屏風一双に描いたもので、女たちが、月蝕の影を鏡に映して見ている図です、これも私が、今度の虹のような感興で描いたものでした。

ところが、須磨の藤田彦三郎さんが、ぜひこの屏風が欲しいといわれて、早速その売約を申し込まれたのでしたが、ほんの一っ時違いで、すでに弘前の某氏が売約されたために、藤田さんの手にはいらなかったのです。藤田さんは非常にこれを惜しがられて、ぜひこの屏風と同じものを揮毫してくれと、懇々私にお話しがあったのですが、私も一応はお受けはしたようなものの、どう考えましても、とてもこれほどのものが出来そうもなく