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へび
蛇
「中央公論 第二十六年第一号」1911(明治44)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,073 字 · 23 页
それからは諦めて余り勉強をしない。
そのうち適齢になったので、一年志願兵の試験を受けたが、体格ではねられた。丁度日清戦争のある年に、早稲田の方が卒業になって帰った。
もう一人前の男になられたからと思って、これまで形式的に御隠居に伺っていた穂積家の経営の事を、そろそろ相談し掛けて見ても、「清吉、お前に任せるから、これまで通りに遣ってくれ」と云って顧みようともしない。そんなら何か熱心にしている事があるかと思って、気を附けて見ても、分からない。もう六十を越していた御隠居には優しくして、一家の事は自分に任せているので、至極結構な御主人ではあるが、どうも張合のないような気がして来た。
尤も不思議に思ったのは、東京から帰った翌年、二十四歳で今の奥さんを迎えた時の事である。身代は穂積家より小さくても、同郡で旧家として知られている家の娘に、これも東京に出て、高等女学校を卒業して帰っているのがあった。いつか越後の人がこの娘を見て、自分の国は女の美しい国だが、お豊さんのように美しいのは、見たことがないと云ったそうである。お豊さんの小さいとき、祭礼やなんぞで、穂積の今の主人と落ち合うことがあると、穂積の千足さんとお豊さんとは好い夫婦だと、人が好く揶揄ったもので、両家でなんの話もないのに、お豊さんが東京へ稽古に行けば、あれは千