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ろうにんぎょう
蝋人形
小川 未明
「新小説」1908(明治41)年5月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,886 字 · 10 页
清吉は尚も泣き止まないで、受持教師が便所から出て来るのを待って、戸の外に立っていると、他の生徒は彼処此処の窓や、階子段の陰から覗いて罵っている。やがて、キイーと戸が開いて、例の教師が出ると他の生徒はいずれも頭を隠してしまう。
清吉は、ただ怨めしそうに教師の顔を見上ていると、冷淡な教師は見向きもせんでさっさと行き過ぎる。清吉はもう胸が張り裂んばかりにもどかしくなって、
「先生――。」といって、後はしゃくり泣をする。教師は一寸立止って後を振り向いて、
「誰がお前を打ったんです。」という。
清吉は一々姓を上げて、小山、清水、林などといって、やはり眼を両手で擦って泣いている。
「よし、よし、後から調べるから、小山、清水、林に残れといいなさい。で、お前も一しょに残るんだ。」といって、もう二度と振向かずに廊下を摺足に歩いて、番茶の香が洩れる教員室にまた入ってしまった。
其様風に、教師はやはり、清吉の味方ではなかった。後で他の生徒を残して取調る時にも、一々彼等の言うことを取上げないまでにも、それに重きを置いて清吉のいうことを全く取上げなかった。
「お前がやはり、先き手出をするから、それで喧嘩になるんだ。