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ろうにんぎょう
蝋人形
小川 未明
「新小説」1908(明治41)年5月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,886 字 · 10 页
その上清吉は、余り学校の成績がよくなかった。いつも席順は後りである。教師等も教員会議の時に時々は清吉の身の上に話が及ぶと、あれは、天性足らないから仕方がないと、殆ど問題にもしない人がある。それで四年間で卒業すべき筈を清吉は六年かかって、或年の四月、十三の年に後から二番目で漸く町の小学校を卒業した。その日は父親の兵蔵も招待されて行ったのである。愈々卒業の儀式が済むと校長は父兄一同に対して各自今後の教育の方針を議した。最後に校長は兵蔵を前に呼んでお前の息子は、これからどうする考だ、彼様具合では余程家庭の教育が必要である。それでないとこの先の見込みが付ないからと諄々と清吉の不勉強や不品行や物覚の悪い点を列挙して、清吉の教育法について呉々も心配してくれたのである。兵蔵はその日悄然と家へ帰ってから校長のいった一部始終を妻に話した。普通ならば赤飯でも焚いて、息子の卒業式を祝うべきであるのに一家は湿り返って、勝気の女房は清吉を馬鹿だといって、彼の頭を擲りつけて、もう高等小学校へは出さないで何処か旅へ丁稚にやるということに定めた。人の好い兵蔵は勿論これに同意したのである。