轻松读懂日语经典作品
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ちょうのえ
蝶の絵
久生 十蘭
「週刊朝日別冊 記録文学特集号」1949(昭和24)年9月10日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 24,644 字 · 49 页
その程度ならまあまあだ。酒が飲めるようになったのは、君にとって進歩かもしれないからな……それはいいが、汚い汚いって、手ばかり洗っているそうじゃないか。そのほうがよほどあやしいぜ」
「手を洗うのはいい習慣だ。慧子がそんなこといったのか。バカだね、あいつは」
「だが、庭の花をみな抜かせてしまったなんて話を聞くと、誰だってぎょっとする。神経科の橋本にでも診てもらったらどうだ。あいつは分析もやるから、ショックの原因を見つけてくれるよ」
「ショックかなにか知らないが、他人に頭のなかを検査されるなんて真っ平だ」
「戦争神経症ってのは、案外、怖いもんだというぜ。へんだと思ったら、はやく手当をしておくほうがいいな」
「へんだなんてことはない。南方にはカユ・メラだの火焔木だの、毒々しいような赤い花がそこらじゅうに咲いているが、帰ってきてしばらくすると、庭の赤い花を見るたびに、南方のいやなイメージが眼に浮かんで、不愉快でやりきれなくなった……赤い色がどうのこうのというと、母や姉たちが心配するから、花のある庭は下品だなんて、いい加減なことをいっておいたんだが、ああまですることはなかったのさ」