轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
ちょうのえ
蝶の絵
久生 十蘭
「週刊朝日別冊 記録文学特集号」1949(昭和24)年9月10日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 24,644 字 · 49 页
という。
はっとして眼をさますと、猿はなにごともなかったような顔で、後肢で首のうしろのところを掻いたりしている。気のせいだとうち消して、うたたねにかかると、それが津村の癖だった、鼻にかかった調子で、「ふふん」とせせら笑いをする。
こういうことが何日かつづき、やりきれなくなって、須田のところへ聞きに行ったが、はぐらかされて帰ってきた。猿を殺したのは、不条理な精神の抑圧に、それ以上、耐えられなくなったからである。
一月のはじめにリーナが死んだ。
リーナにたいする山川家の扱いは、見せかけほど冷酷なものではなく、内実は、困らぬだけのものを、毎月、こっそりと届け、恩恵で縛りつけておいた。死んだときも常子が行って、後で問題が起きない程度に始末をし、これで厄が落ちたと胸を撫でおろしたが、山川のほうは、秘密を分けあうものがいることで、いくらか慰められていたのに、リーナの死で漏泄の道がなくなり、孤独感でおしつぶされそうになった。
山川は抑圧から解放されたいというねがいでとりとめなくなり、町でMPに出逢うと、「もしもし、僕はね……」と話しかけたい衝動が起き、それをおさえるのに脂汗をながした。