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かにこうせん

蟹工船

小林 多喜二

「戦旗」1929(昭和4)年5月、6月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 61,890 字 · 125 页

青空文庫

彼等は第二号川崎の連中が、こっちに歩いてくるのを見ると、その意味が分った。四、五人が声をあげて、手を振った。

「やめだ、やめだ!」

「ん、やめだ!」

その二つが合わさると、元気が出てきた。どうしようか分らないでいる遅れた二、三人は、まぶしそうに、こっちを見て、立ち止っていた。皆が第五川崎のところで、又一緒になった。それ等を見ると、遅れたものはブツブツ云いながら後から、歩き出した。

吃りの漁夫が振りかえって、大声で呼んだ。「しっかりせッ!」

雪だるまのように、漁夫達のかたまりがコブをつけて、大きくなって行った。皆の前や後を、学生や吃りが行ったり、来たり、しきりなしに走っていた。「いいか、はぐれないことだど! 何よりそれだ。もう、大丈夫だ。もう――!」

煙筒の側に、車座に坐って、ロープの繕いをやっていた水夫が、のび上って、

「どうした。オ――イ?」と怒鳴った。

皆はその方へ手を振りあげて、ワアーッと叫んだ。上から見下している水夫達には、それが林のように揺れて見えた。

「よオし、さ、仕事なんてやめるんだ!」

ロープをさっさと片付け始めた。「待ってたんだ!」

そのことが漁夫達の方にも分った。