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かにこうせん

蟹工船

小林 多喜二

「戦旗」1929(昭和4)年5月、6月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 61,890 字 · 125 页

青空文庫

函館を出帆してから、四日目ころから、毎日のボロボロな飯と何時も同じ汁のために、学生は皆身体の工合を悪くしてしまった。寝床に入ってから、膝を立てて、お互に脛を指で押していた。何度も繰りかえして、その度に引っこんだとか、引っこまないとか、彼等の気持は瞬間明るくなったり、暗くなったりした。脛をなでてみると、弱い電気に触れるように、しびれるのが二、三人出てきた。棚の端から両足をブラ下げて、膝頭を手刀で打って、足が飛び上るか、どうかを試した。それに悪いことには、「通じ」が四日も五日も無くなっていた。学生の一人が医者に通じ薬を貰いに行った。帰ってきた学生は、興奮から青い顔をしていた。――「そんなぜいたくな薬なんて無いとよ」

「んだべ。船医なんてんなものよ」側で聞いていた古い漁夫が云った。

「何処の医者も同じだよ。俺のいたところの会社の医者もんだった」坑山の漁夫だった。

皆がゴロゴロ横になっていたとき、監督が入ってきた。

「皆、寝たか――一寸聞け。秩父丸が沈没したっていう無電が入ったんだ。生死の詳しいことは分らないそうだ」唇をゆがめて、唾をチェッとはいた。癖だった。