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かにこうせん

蟹工船

小林 多喜二

「戦旗」1929(昭和4)年5月、6月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 61,890 字 · 125 页

青空文庫

焼火箸をいきなり尻にあてることや、六角棒で腰が立たなくなる程なぐりつけることは「毎日」だった。飯を食っていると、急に、裏で鋭い叫び声が起る。すると、人の肉が焼ける生ッ臭い匂いが流れてきた。

「やめた、やめた。――とても飯なんて、食えたもんじゃねえや」

箸を投げる。が、お互暗い顔で見合った。

脚気では何人も死んだ。無理に働かせるからだった。死んでも「暇がない」ので、そのまま何日も放って置かれた。裏へ出る暗がりに、無雑作にかけてあるムシロの裾から、子供のように妙に小さくなった、黄黒く、艶のない両足だけが見えた。

「顔に一杯蠅がたかっているんだ。側を通ったとき、一度にワアーンと飛び上るんでないか!」

額を手でトントン打ちながら入ってくると、そう云う者があった。

皆は朝は暗いうちに仕事場に出された。そして鶴嘴のさきがチラッ、チラッと青白く光って、手元が見えなくなるまで、働かされた。近所に建っている監獄で働いている囚人の方を、皆はかえって羨しがった。殊に朝鮮人は親方、棒頭からも、同じ仲間の土方(日本人の)からも「踏んづける」ような待遇をうけていた。

其処から四、五里も離れた村に駐在している巡査が、それでも時々手帖をもって、取調べにテクテクやってくる。