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かにこうせん
蟹工船
小林 多喜二
「戦旗」1929(昭和4)年5月、6月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 61,890 字 · 125 页
と云った。
彼は坑夫独特な、まばゆいような、黄色ッぽく艶のない眼差を漁夫の上にじっと置いて、黙っていた。
秋田、青森、岩手から来た「百姓の漁夫」のうちでは、大きく安坐をかいて、両手をはすがいに股に差しこんでムシッとしているのや、膝を抱えこんで柱によりかかりながら、無心に皆が酒を飲んでいるのや、勝手にしゃべり合っているのに聞き入っているのがある。――朝暗いうちから畑に出て、それで食えないで、追払われてくる者達だった。長男一人を残して――それでもまだ食えなかった――女は工場の女工に、次男も三男も何処かへ出て働かなければならない。鍋で豆をえるように、余った人間はドシドシ土地からハネ飛ばされて、市に流れて出てきた。彼等はみんな「金を残して」内地に帰ることを考えている。然し働いてきて、一度陸を踏む、するとモチを踏みつけた小鳥のように、函館や小樽でバタバタやる。そうすれば、まるッきり簡単に「生れた時」とちっとも変らない赤裸になって、おっぽり出された。内地へ帰れなくなる。彼等は、身寄りのない雪の北海道で「越年」するために、自分の身体を手鼻位の値で「売らなければならない」