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かにこうせん

蟹工船

小林 多喜二

「戦旗」1929(昭和4)年5月、6月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 61,890 字 · 125 页

青空文庫

皆は遠くから飾りのついた短剣が、歩くたびに尻に当って、跳ね上がるのを見ていた。どれが、どれよりも偉いとか偉くないとか、それを本気で云い合った。しまいに喧嘩のようになった。

「ああなると、浅川も見られたもんでないな」

監督のペコペコした恰好を真似して見せた。皆はそれでドッと笑った。

その日、監督も雑夫長もいないので、皆は気楽に仕事をした。唄をうたったり、機械越しに声高に話し合った。

「こんな風に仕事をさせたら、どんなもんだべな」

皆が仕事を終えて、上甲板に上ってきた。サロンの前を通ると、中から酔払って、無遠慮に大声で喚き散らしているのが聞えた。

給仕が出てきた。サロンの中は煙草の煙でムンムンしていた。

給仕の上気した顔には、汗が一つ一つ粒になって出ていた。両手に空のビール瓶を一杯もっていた。顎で、ズボンのポケットを知らせて、

「顔を頼む」と云った。

漁夫がハンカチを出してふいてやりながら、サロンを見て、「何してるんだ?」ときいた。

「イヤ、大変さ。ガブガブ飲みながら、何を話してるかって云えば――女のアレがどうしたとか、こうしたとかよ。お蔭で百回も走らせられるんだ。