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ちぬられたかいとう

血ぬられた懐刀

国枝 史郎

「講談倶楽部」1928(昭和3)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 35,586 字 · 71 页

青空文庫

「いやいやせっかくのご忠告ではあるが、某においてはあきらめられん。……あまりと云えば横暴でござる! 某より殿下へお願いしたところ、よかろうよかろう好きな女があるなら、余が懇望だと申して連れて来い。その上で其方にくれてやろう。――で、某は使者という格で、北畠家へ押して行き、あのお紅を引き上げて来た。……と、どうだろう殿下においては、これは以外に美しい。側室の一人に加えよう。こう仰せられて手放そうとはされぬ。某を前に据えて置いて、お紅に無理強いに酌などさせる。寝所へ連れて行こうとされる。誰も彼も笑って眺めている。其のためにあつかおうとはしない! 無体なのは殿下のやり口だ! 庶民に対してはともかくも、臣下の某に対しての、やり口としては余りにひどい! もはや某は聚楽へは仕えぬ。ご奉公も今日限り。浪人をする浪人をする!」

不破小四郎を取り囲んで、朽木三四郎、加島欽哉、山崎内膳、桃ノ井紋哉、四人の若武士が話しながら、こっちへ歩いて来るのであった。

ところで彼らの話によれば、気の毒なことにはお紅という娘は、北畠家から奪い取られて、今、聚楽第にいるらしい。では主殿での夜遊の宴の、その中にも入っていることであろう。