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ちぬられたかいとう

血ぬられた懐刀

国枝 史郎

「講談倶楽部」1928(昭和3)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 35,586 字 · 71 页

青空文庫

殺せ殺せ、目茶苦茶に殺せ! 聚楽の栄華も先が知れている」

こう呟いた者があったが、刺繍の肩衣に前髪立の、眼のさめるような美少年であった。美童は不破伴作であった。

狂人じみた目付きをして、秀次は大広間を見廻したが、

「目障りになる! 片付けろ! 死骸は厭だ! 井戸へでも沈めろ!」

それから千浪を引きずったが、

「今夜の伽だ! 嬉しそうに笑え!」

で、襖を開けようとした。

と、その襖が向こうから開いて、

「孫七郎様」と云う声が聞こえてきた。優しくて穏かではあったけれど、威厳のある老女の声であった。

つと立ちいでた人物がある。

円頂黒衣鼠色の衣裳、手に珠数をつまぐっている。眉長く鼻秀で、額は広く頤は厳しい。澄んではいるが鋭い眼、頬に無数の皺はあるが、かえって顔を高貴にしている。

これこそ女傑幸蔵主であった。

「相変わらずのお悪戯でござりますか」

あたかも子供でもあしらうように、こう秀次に云いかけたが、咎めるような調子はなくて、なだめるような調子があった。そうしてそれが大広間の殺気と、秀次の兇暴の心持とを、平和な甘いものにした。

「幸蔵主の姥か」と鼻白んだように、秀次は千浪の手を放したが、