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ちまんだらしちょうぶし
血曼陀羅紙帳武士
国枝 史郎
「冨士」講談社 1939(昭和14)年9月~12月中絶、「血煙天明陣」桃源社 1970(昭和45)年に付載して完結公刊
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 88,970 字 · 176 页
「首級だーッ」
と、頼母は、思わず叫んだ。と、首級はユルユルと動き、一方へ廻り、すぐに頼母の方へ、ぼんのくぼを見せたが、やがて窓枠からだんだんに遠退き、間もなく闇に融けて消えてしまった。しかし、すぐに続いて、今度は女の首級が一個、ユルユルと闇から浮き出して来、窓へ近寄り、頼母の方へ正面を向けた。やはり眼を閉じ、口を食いしばり、額へ乱れた髪をかけていた。しかし、その首級もユルユルと廻り、頼母へぼんのくぼを見せ、やがて闇の中へ消えた。頼母は全身を強ばらせ、両手を握りしめた。と、またも、窓へ、以前の男の首級があらわれた。
「典膳の首級だーッ」
と、頼母は夢中で喚いた。そう、その首級は見覚えのある渋江典膳の首級であった。
(しかし典膳は、三日前の晩に、お浦のために殺されて、川の中へ落とされたではないか! 何んということだ! 何んという! ……)
典膳の首級は、頼母にそう叫ばれると、閉じていた眼を開けた。血が白眼の部分を櫨の実のように赤く染めていた。だが、その典膳の首級は、例のようにユルユルと廻って、闇に消え、それに代わって、以前の女の首級が現われた。
「お浦だーッ」