轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
ちまんだらしちょうぶし
血曼陀羅紙帳武士
国枝 史郎
「冨士」講談社 1939(昭和14)年9月~12月中絶、「血煙天明陣」桃源社 1970(昭和45)年に付載して完結公刊
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 88,970 字 · 176 页
一方は宿の家並みで、雨戸をとざした暗い家々が、数町の彼方に立ち並んでおり、反対側は髪川で、速い瀬が、月の光を砕いて、銀箔を敷いたように駛ってい、その対岸に、今を盛りの桜の老樹が、並木をなして立ち並んでい、烈しい風に、吹雪のように花を散らし、花は、川を渡り、お浦の肉体の上へまで降って来た。そうして、その桜並木の遙か彼方の、斜面をなしている丘の上の、諏訪神社の辺りでは、火祭りの松明の火が、数百も列をなし、蜒り、渦巻き、揉みに揉んでいるのが、火龍が荒れまわっているかのように見えた。
お浦は、やっと川縁まで這い寄った。彼女は、崖の縁を越して、前の方へ腕を延ばした。すぐそこに川が流れているものと思ったかららしい。
(水が飲みたい、水を!)
しかし川は、彼女のいる川縁から、一丈ばかり下の方を流れていた。そうして、川縁から川までの崖は、中窪みに窪んでい、その真下は岩組であった。
その岩組の間に挾まり、腰から下を水に浸し、両手で岩に取り縋り、半死半生になっている男があった。渋江典膳であった。
彼は、この髪川の上流、竹藪の側で、お浦のため短刀で刺された上、川の中へ落とされた。