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まちはふるさと
街はふるさと
「読売新聞 第二六三六七号~第二六五二〇号」1950(昭和25)年5月19日~10月18日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 193,435 字 · 389 页
いずれも然るべき品物らしく、敗戦国で拝まれるのがフシギの品々である。
「コニャックは珍しいな。十何年ぶりの再会になるだろう。これを、もらいましょう」
「ハイ」
「時に、ローソクは、どうしたわけですか。今日は東京の停電日ですか」
「いいえ。なんのオモテナシもできませんので、趣向したのですけど、先生のお気に召しますか、どうか。開店二日目の記念日なんです」
「このお店は今まで休業ですか」
「いいえ、私自身の開店記念日。大庭先生を招待させていただくのは、身にあまる光栄でございます」
長平は驚いて芸者を見つめた。芸者か、店の女将かと見ちがえたのは道理である。洋髪ではあるが、場所柄では素人とはうけとれぬ和服。五尺五寸にちかいかと思われる長身が一きわ目立っていたから、この女の出入には特に目をひかれていたが、これが梶せつ子とは。言葉の様子では、どうも、そうらしい。
「あなたが梶さんでしたか」
「ハイ。どうぞ」
と、せつ子はコニャックをつぐ。つぎ終ると、
「お気に召すほどのオモテナシはとてもと存じますが、どうぞ、ごゆっくり」
軽く、しかし、丁重に一礼して、すぐ立ち去った。管々しいことは一切ぬき。