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まちはふるさと

街はふるさと

坂口 安吾

「読売新聞 第二六三六七号~第二六五二〇号」1950(昭和25)年5月19日~10月18日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 193,435 字 · 389 页

青空文庫

放二は説明の代りに身をひいた。そして記代子が離れて行くのを、静かに、しかし、愛情をこめて見送りたかった。ごきげんよう! ボン・ボアイヤージュ! というように。

「若い者は、手間をかけたがるものさ。曲った方へ、曲った方へ、歩きたがるんだ」

青木は記代子をひやかした。しかし、若い者だけのことじゃない。自分にしろ、礼子にしろ、もっと、ひどいようなものだ。

記代子はなぜか顔色を変えた。一息にグラスをのみほして、

「もっと、ちょうだい」

「あんまりハデな飲み方をしないでくれよ。お嬢さんがのびちゃうのは、御当人は太平楽かも知れないが、連れの男は、憎まれたり疑られたり、楽じゃないからな」

記代子は、又、一息にほした。

「お代り、ちょうだい」

「よせよ。もう、あんたは六パイだ」

「でましょう」

道へでると、記代子は腕をくみ、肩をよせた。グイグイ押しつける。足はシッカリして、酔ってるようにも思われないから、青木は小娘の大胆さに当惑して、

「もう、お帰り。駅まで送るよ」

「イヤ」

「もう、のめやしないよ」

「話があるのよ」

「じゃア、喫茶店で休むか」

「いいえ。歩きながらが、いいの」

記代子は暗い道へ曲りこんだ。