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まちはふるさと
街はふるさと
「読売新聞 第二六三六七号~第二六五二〇号」1950(昭和25)年5月19日~10月18日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 193,435 字 · 389 页
子供が生れるんだぜ。ぼくは、どうしたら、いいのさ」
「君はどうしたいのだ」
「それが分らないんだよ。なア、長さん。オレをあわれんでくれよ。どうしていいのか、わからん男を。なア。いい年をして」
記代子が青木にニンシンをうちあけたのは、伊豆の温泉宿だった。
「あなた、まだ、本当に、子供なかったの」
「本当になかったよ」
「子供、ほしい?」
青木は答えることができなかった。自分の都合は問題ではない。自分のために子を生む記代子をあわれんだのだ。
「君は、欲しいのかい?」
「あなたは?」
青木は記代子が後悔していないことを知った。どこに拠りどころがあるのだろうか。人生の敗残者、五十のおいぼれの子を宿して。その無邪気さが、あわれであった。
しかし、青木が答えに窮していると、記代子は青木の顔を見つめて、
「殺しちゃう?」
彼は記代子の目に追いつめられて、うろたえたのだ。あの目を青木は忘れることができないのだ。何を語っている目だろうか。
子を殺す、生む、それだけのことではないのだ。暗い一生をあゆむたった一つの小さい窓。あんな目にさせたのが自分だと思うと、たまらなかった。
六