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まちはふるさと

街はふるさと

坂口 安吾

「読売新聞 第二六三六七号~第二六五二〇号」1950(昭和25)年5月19日~10月18日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 193,435 字 · 389 页

青空文庫

そんなことも何でもないことらしく、誰もなんとも言わなかった。

「お部屋があるって、いいわねえ。こんなとこでも、お客ひろえるんだもの」

「すみません。でも、これがはじめてね。兄さんのお友達、お金もってたこと一度もないわ。あべこべにタバコまきあげるわね」

「貯金通帳見せろ、おごれよ、なんてね。兄さんのお友達、哀れだわよ」

「若いのは、ダメだ。お金もってるの泥棒だけ」

ルミ子は笑った。彼女は現実からつかんだものをソックリ身につけて、それ以外のことに関心がないようだった。

「先生は疲れてらッしゃるから、お部屋の用意してあげたら」

と放二にうながされて、

「アッ、そう。大事なお客様だ。めぐりあいが変テコだから、カッコウがつかないや」

ルミ子は自分の部屋へ急ごうとして、笑いながらふりむいて、

「オジサンに、兄さんに、先生か。男がみんな居るみたいだ」

「弟も、オトウサンもあるわよ」

「そんなの、男じゃないや」

と呟きながら立ち去った。

八

ルミ子の部屋にはチャブダイが一つあるだけで、ほかに家具も、目ぼしい品物もなかった。部屋の隅に日記帳が一冊ころがっていた。

「いくらだい。