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まちはふるさと
街はふるさと
「読売新聞 第二六三六七号~第二六五二〇号」1950(昭和25)年5月19日~10月18日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 193,435 字 · 389 页
彼女は放二の言葉をウワの空できいていたが、
「まだ勤めから戻りませんよ」
つめたい返事であった。ちょうど勤め人の帰宅する時刻であった。
「もうじきお帰りでしょうか」
と、きくと、敏子の母は益々冷淡に、
「毎晩おそいですよ」
「幾時ごろですか」
「人の寝しずまるころですよ」
そうおそくまで遊んでくるのでは、夜は会えない。
「ではお勤め先でお目にかかりたいと思いますが、お勤め先はどこでしょうか」
敏子の母はとうとう怒りだした。
「女の子のあとを追いまわしてどうするの。いやらしい。お帰り。相手にしていられやしない。忙しいのに」
ブツクサ呟きながら、さッさと振向いて去ってしまった。
放二はそれ以上どうすることもできなかった。もう一度、克子を訪ねるほかに手段がない。社線、省線、社線と、又、一時間半ほど廻らなければならない。
克子はまだ海から戻らなかった。
克子の父母はフビンがって、彼を室内へ招じてくれた。
「こちらのお嬢さんも京都の女学校の御出身ですか」
「どうして?」
「今まで廻ったお友だちが、そうですから」
「克子は疎開前のお友だち。たしか、二年まで、ご一しょでしたわね」
しばらく世間話をしているうちに、克子が疲れて、もどってきた。