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まちはふるさと

街はふるさと

坂口 安吾

「読売新聞 第二六三六七号~第二六五二〇号」1950(昭和25)年5月19日~10月18日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 193,435 字 · 389 页

青空文庫

克子は、茶の間の青年が、記代子の行方をさがして、彼女の帰りを待っていたときいて、不キゲンであった。

彼女は黙りこくッて、考えこんでいたが、

「ねえ。会社の御用なんて、嘘でしょう」

「いいえ。なぜですか」

克子は薄笑いをうかべた。

「嘘にきまってるわ。記代子さんがサボッたのに、急用だなんて。昼間だったら、それで人をだませるけど、もう夜よ。会社はひけてるでしょう。サボッた記代子さんも家へ帰ってるわ。なぜ記代子さんちへ行かないの。家に居ないからでしょう。行方不明だからでしょう」

五

「ずいぶん御心配らしいわね」

克子の冷笑はするどかった。

「とうとう家出したのね。無軌道ね。記代子さんらしい結末だわ。ニンシンしていたんですものね」

目をあげて、放二を嘲笑した。

「そんな失礼なことを」

母親はハラハラして、

「あなた、記代子さんの行先に心当りはないのですか」

「知らないわ。十日ほど前に、会ったけど、お茶ものまずに別れたわ。最近は、そう親しくしていないのよ」

これ以上きいてもムダだと放二は思った。

「ほかに記代子さんの親しいお友だちは、どなたでしょうか」

「どこを捜したんですの?」