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まちはふるさと
街はふるさと
「読売新聞 第二六三六七号~第二六五二〇号」1950(昭和25)年5月19日~10月18日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 193,435 字 · 389 页
しかし、キッピイの口からは、もうあれ以上きくことができないだろうと放二は思った。一筋縄ではいかないらしいが、とにかく、やってみるだけだ。
彼は、せつ子が自分に与えた忠告を、そっくり、せつ子に返しておくのが何よりだと思った。せつ子は何も知らない方がいいのだ。記代子の過去も、現在も。青木にも知らせない方がいいのだ。彼ひとり突きとめて、自分の胸に隠しておけばすむことだ。
三
放二は早版の夕刊新聞を買いこんで、電車にのった。一般の退社時刻には早すぎる時間であった。キッピイのところへ立ち寄って、思いきって訊いてみようかと思案したが、新宿の喫茶街の開店時刻には間があるし、キッピイの自宅へ行けば、行き違いになる時刻であった。
キッピイが五人目の名を言うことができないのは、なぜだろう? 人生の裏街では、どんなことでも有りうるのだ。どんな考えられないことでも、それが実在するときには、なんでもない顔をしているのだ。そして、全てが在りうるのである。
青木のほかにも記代子の恋人がいたかも知れぬ、ということも、放二にとっては、なんでもなく実在しうることであった。