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まちはふるさと
街はふるさと
「読売新聞 第二六三六七号~第二六五二〇号」1950(昭和25)年5月19日~10月18日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 193,435 字 · 389 页
「ヘエ。これなんです」
なんでもないように渡された紙片に、二ツの所番地と、野中幸吉という姓名が記されていた。
「この野中がエンゼルの本名なんです。百万円もかけて普請した立派なウチに住んでるそうですぜ。千坪からの花園をもってるそうでさア。花束を卸してるんだそうですなア。商魂抜群のアンチャンだそうで」
甚だ意外な話であった。
「それじゃア、愚連隊どころか、立派な商人じゃありませんか」
「私だって、そう思いましたよ。きいてみると、そうでもないねえ。屋敷や花園の敷地だって、焼跡を勝手に拝借したもの、花売りだって因業な商売してるんだそうです。商魂があって、金ができるし、隆々と、いい顔だそうですよ」
ジイサンは他の所番地を示した。そこはアパートであった。
「このアパートがね。新築するまで住んでたとこで、今でもここにいくつか部屋を持ってるンだそうですがね」
住所はいたって簡単にわかってしまった。百万もかけて新築して、千坪からの花園をつくって商売しているからには、世を忍ぶ必要はないのだろう。
放二はジイサンにムリにお金をにぎらせて別れた。記代子の居るのはアパートだろうと思ったが、先ず本宅へ伺うのが礼義であるから、そう遠くないお屋敷町の焼跡へでかけた。