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まちはふるさと

街はふるさと

坂口 安吾

「読売新聞 第二六三六七号~第二六五二〇号」1950(昭和25)年5月19日~10月18日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 193,435 字 · 389 页

青空文庫

自分を知ってもらうという手段があるだけだ。信じてくれるとは限らないが、自分の生活を見てもらって、ありのままの自分を知ってもらうことである。

放二は夜の新宿の仕事場へエンゼルを訪ねて二度目であった。エンゼルを自宅へ誘い、オデン屋でビールとツマミモノを買って、アパートで酒宴をひらいた。

連日雨もよいの悪天候で、女たちはアブレがちであった。

新宿から飲みつゞけで、エンゼルは酔っぱらった。

「ちょッと、お忍びのアパート住い。結構ですねえ。ハッハ」

エンゼルは醜い女たちには目もくれず、ルミ子の顔から視線をはなさず追いまわしていた。

「ぼくなんか、こうは、できませんや。腕がちがうんですな。ぼくは商売の都合で、野郎どもの面倒をみていますが、あなたは風流の志で、パンスケを養って、かしずかれていらッしゃる。貴族は女中が好き。ねえ。汚いアパートに身を落して、パンスケにかしずかれて、結構ですねえ。お金なんざア、左ウチワでころがりこむんだ。大金持の女社長に可愛がられてね。家なんざ、わざと買ってもらわないね、この人は。この汚いパンスケ・アパートへお忍びぐらし、乙な人だなア」