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まちはふるさと

街はふるさと

坂口 安吾

「読売新聞 第二六三六七号~第二六五二〇号」1950(昭和25)年5月19日~10月18日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 193,435 字 · 389 页

青空文庫

診たて違いということが、よくあるでしょう。百パーセント死ぬなんて、そんな自分勝手な、自分だけ絶対に偉いようなことを仰有って」

ルミ子は自分がとりのぼせているのに気がつくと、自分のノドを手でおさえて、あきらめたように沈黙した。又、ふと、顔をあげて、医師を見つめて、

「先生。奇蹟は、どこにでも、あります。情熱の中にあるのですわ。先生が治してあげようと信じて下されば、奇蹟はあるかも知れないのです」

「そう。ぼくの言いすぎでした。毎日きて、できるだけの手当をつくしますから、安心なさい」

長平一人を相手のつもりで腹蔵ない意見をのべていた医師は、伏兵の爆撃におどろいたが、世なれた態度でルミ子を慰めてやることを忘れなかった。

医師を送りだしてから、長平は放二を見舞って、

「あんまりガンコに、ひとりぎめに諦めちゃアいけないぜ。ノンビリとノンキな気持になるがいい」

放二は童子のようにニコニコして、

「ぼくは、ノンビリと、ノンキな気持なんです。すべてに、満足しています」

「そうか。それに越したことはない。ぼくは東京にいるあいだ、ルミ子の部屋に泊っているから、用があったり、話相手が欲しいときには、よびによこしたまえ」