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まちはふるさと

街はふるさと

坂口 安吾

「読売新聞 第二六三六七号~第二六五二〇号」1950(昭和25)年5月19日~10月18日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 193,435 字 · 389 页

青空文庫

至極要領をつくしている。一人の男を選んで与えて、それで片づけてしまうのに比べると、この方が理にかなってはいる。この方が本質的に、あたたかい方法ではある。帰る家があるというのは一生の救いかも知れない。二度と帰らぬ覚悟で嫁ぐという精神は、そもそも幸福を約束する出発ではない。特にそれを強いられでは、特攻隊のようなものだ。

長平の言葉にも一理はあるが、チョイチョイ戻られては、困るであろう。青木は苦笑して、

「君のは、禅問答だね。一般家庭じゃ、禅坊主にはなりきれないさ」

「君まで、そんな風に思うかね。オレはハッキリしていると思うな。女には、家が二つあるんだね。生れた家と、子供を生んだ家とだね。子供を生まなくッてもかまわないが、とにかく、この二ツのうち、どッちかを選ぶ自由を与えておくのさ。娘の親は、それだけ覚悟しておくんだね。生んだ義務だよ。オレは記代子に愛情なんぞもってやしない。義務をもってるだけだね。義務というほどでもないが、勝手にしやがれということさ。戻ってきたら、仕方がない。こりゃア、奴めに権利があるのさ。そう心得ておきゃアいいと思うんだね」

長平流の筋は立っていた。