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まちはふるさと
街はふるさと
「読売新聞 第二六三六七号~第二六五二〇号」1950(昭和25)年5月19日~10月18日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 193,435 字 · 389 页
だが、長さんほどの水ムシともなれば、片言隻句、人生すべてこれ白骨ではありませんか。ねえ。長さん。あなた、なんのために、なぜ、上京したのさ。え? よく晴れた日に、か。やれやれ。雨の降る日、風の吹く日は、どうしてようてんだろうなア、この幽霊は」
その幽霊の本体はすぐそこに横たわっていた。特に正装とも思われないが、見苦しくない和服を身につけ、お化粧もし、今は解かれているが、紐で二ヶ所膝をむすんでいたそうである。流行の毒薬や催眠薬ではなくて、かなり特殊な薬を用いたらしいということであった。死に方について用意をきわめるだけの落付いた心構えがあったのである。ねているような顔だった。ふだんと変りなく、虚心で、可愛く見えた。
湯呑みに灰を入れ線香をたてた人があったらしい。
「君たちかい。線香を供えてやったのは」
「そうはコマメにいかないねえ。センチな気分にひたるヒマがなかったほど、労働が苛烈をきわめたんだなア。二三、回向の方々があったらしいや」
青木は腕時計をのぞいて、
「もう十二時すぎてやがら。帰る電車がなくなったわけではないが、ひとつお通夜をしてやるか。完全なるお通夜をね。