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まちはふるさと

街はふるさと

坂口 安吾

「読売新聞 第二六三六七号~第二六五二〇号」1950(昭和25)年5月19日~10月18日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 193,435 字 · 389 页

青空文庫

オールナイトさ。二千円、包まなきゃアいけねえや」

しかし青木はフッと溜息でももらしそうな、ベソをかきそうに沈みこんだ。

「なア。長さんや。彼女はたしかに、可憐ですよ。だけどなア。オレは同情できねえや。オイ、長さんや。これ、本当かい? 彼女は、なぜ、死んだのさ。彼女の遺書たるや、何物ですかい。ただ、死にゃア、まだ、わかるよ。兄さんが死んだから、生きていてもツマラないッて? しかし、毎日々々が幸福で、たのしく、不平を忘れていられましたとネ。甘えてやがら。元々、自殺ぐらい甘ッたるいことはないがさ。あたりまえだ。一番人生の甘えん坊が、自殺するのさ。だから、彼女が妙テコレンな夢をえがいて、それに甘えて死ぬことはまた可なりかも知れないが、甘え方が気に食わないんだよ。ねえ、長さん。パンパンが、精神的な愛情なんて、笑わせやがるよ。それはね、パンパンが精神的な何かにすがるのは当然あって然るべきかも知れないが、こと恋愛的な雰囲気に於て、精神的とは笑わせらアね。人をバカにしてるじゃないか。ぼくはパンパンを軽蔑してやしませんよ。むしろ、尊敬してるんだ。パンパンたる者は、精神的などゝいう怪しげなものを、ハッキリ土足にかけてくれなきゃア、こまるじゃないか。