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まちはふるさと
街はふるさと
「読売新聞 第二六三六七号~第二六五二〇号」1950(昭和25)年5月19日~10月18日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 193,435 字 · 389 页
十
礼子はながく無言である。
別居のイキサツはまだ何一ツきいていないが、きいたところで、どうなろう。もう会見は終るべきだ、と長平は思った。
「ぼくの年齢になると――あながち年齢のせいではないかも知れませんが、恋愛なんて、もう面倒くさくてダメなんです。浮気の虫は衰えを見せませんが、恋に生きぬくなんて気持はもはや毛頭ありません」
長平は一方的に心境を語りはじめた。礼子の一方的な愛情の押しつけに対するシメククリの返答としてであった。
「女房に満足してる亭主はいないものですよ。世界中の女をテストして女房を選ぶわけじゃなし、かりに偶然世界一の女房に当った男がいても、よその花に憧れるのは自然の情ですから。そこで、正直によりよき恋人をもとめると、次々と、棺桶にねむるまでキリがありません。おまけに人間の愛慕の激情というものは、いくつの年齢になっても、初恋と同じだけ逆上的なもので、この感情に身をまかせると、仙人でもそうなる。そのくせ、短時間で例外なくさめます。又、新しくやらねばならぬ。精神病の発作と同じものですよ」
無礼、軽薄な言辞だと長平は自ら思った。