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まちはふるさと
街はふるさと
「読売新聞 第二六三六七号~第二六五二〇号」1950(昭和25)年5月19日~10月18日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 193,435 字 · 389 页
泥沼のフチに立ちかけて踏みとどまっている放二には、その切なさが他人のものではなかった。
それにしても、得体の知れないのは、大庭に対する礼子の感情であった。どこまでが本当だか見当のつけようがなかった。
虚栄、又は、うぬぼれというのだろうか。それとも本心からの信念だろうか。
「私というものを失って、大庭さんがお気の毒とは思いませんか」
と、心安らかに言い放った礼子は、天使のように邪念ないものに見えたのである。
しかし放二の責任感はそれ以上に安定しており、礼子の数々の執拗な努力も、長平の宿をききだすことは不可能であった。
礼子はついにあきらめると、
「いまにお分りになってよ」
ニッコリ笑って言いすて、いとアッサリと立ち去ってしまった。去るにのぞんで、にわかに風に舞い去る花びらのように軽かったので、放二はわが目をいぶかる思いにうたれもしたが、そこから解答をひき出すことは不可能であった。
青木は二十分ちかい時間をかけて戻ってきて、
「駅の近くまで追っかけて、それでも姿をつかまえることができたよ。今夜はしみるように酒が恋しい。もう三十分ほど、つきあってくれたまえ」