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まちはふるさと
街はふるさと
「読売新聞 第二六三六七号~第二六五二〇号」1950(昭和25)年5月19日~10月18日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 193,435 字 · 389 页
記念日
一
午後二時半。小田原から、東京行急行にのりこむ。
熱海、湯河原、小田原のあたりは、温泉へ執筆旅行の文士と、それを追っかける編集者がきりもなく往復しているところで、危険地帯であった。
文士も編集者もたいがい秘密のアイビキぐらいやってる人種であるから、平気のようなものであるが、見られた者だけが噂にのぼるから、見られるとバカをみる。だからアベックで出かけるようなことはなく、別の汽車で出て、別々に帰るというやり方である。
せつ子もその手を用いて大過なくやってきたが、今度だけは勝手がちがう。
宇賀神芳則は右翼団体の顧問格の策士で、陰謀にかけては天才的な男であるが、一面、大変な露出狂で、どんな秘密も洗いざらいペラペラ喋りまくっているように見える。
実際は、喋りまくっているのは、どうでもいいようなことで、大事の陰謀は決して喋っていないのである。小事について露出狂的であるところが、大事な秘密をさとられない秘訣であるのかも知れない。
宇賀神のところへは各党の政治家が出入りしてゴキゲンをとりむすび、金をもらっている。彼の手からバラまかれる金は、門外漢には想像もつかないほどの巨額であるが、どんな方法で、どれくらいの収入があるのだか、誰も見当がつかないのである。