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まちはふるさと
街はふるさと
「読売新聞 第二六三六七号~第二六五二〇号」1950(昭和25)年5月19日~10月18日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 193,435 字 · 389 页
「ハッハ。それは、あなたも同じことでしょう」
青木はくすぐったそうに笑って、
「あなたは貧乏すらも自覚しようとしないようだね。それは、そもそも虚勢以外の何ものですか」
礼子はあきらめた。そして、涙がにじんだ。憎しみがあふれて、たえがたくなった涙であった。
礼子のハンドバッグには九万五千円ほどの金があった。持ち物の殆ど全部を売り払って得た金である。どう使うという目的は定まっていないが、最後の軍資金である。戦うための金だ。そして、これを使い果しても戦果がなければ、最後の覚悟を定める時であった。
礼子は青木の不在の部屋を訪れて、戸田の置き残した手紙をよみ、青木のあまりの窮状に、自分の窮状を忘れた。彼を窮地から救うために、最後の軍資金の半分をさいてやろうと考えていたのである。
その思いが切なすぎて、礼子の怒りがかりたてられた。
「北川さんから千円おかりしなかったのが虚勢だとおッしゃるのですか。虚勢ではありません。覚悟です。覚悟があるからです。でも、どんな覚悟だか、私も知らないのですけど、ね。誰だって、本当に覚悟をきめたときは、どんな覚悟だか知らないものなのよ。