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まち
街
宮本 百合子
「女性」1927(昭和2)年7月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,689 字 · 37 页
「まるで反対です、美しい夫人がたとこの幸福な御家庭に祝福あれと云ったのです。然し、神はこの頃の流行でないから小さい声で云わなければなりません」
ステパン・ステパノヴィッチは暫くもずもずしていたが、軈てジェルテルスキーを引っぱって台所へ入って行った。
「何だろう、え? 何だろう」
立って覗きそうにするマリーナを、ダーリヤは苦々しげに止めた。
「あとで、リョーニャが話してくれますよ」
障子の彼方側の板の間で、石油鑵に足をぶつけながら、ひどく恐縮してステパンが上衣の内衣嚢から一通の手紙を大事そうにとり出した。彼は、ジェルテルスキーの耳に口をつけて囁いた。
「――実に恐縮です、実に厚かましい願いですが、今朝この手紙を受けとったまま悲しいことに読めません。貴下にすがって一つ読んでいただくわけには行きますまいか」
ジェルテルスキーは、意外な秘密に引きこまれる苦笑を洩しながら手を出した。封筒は桃色で四つ葉のクローヴァの模様が緑色で浮き出している。ジェルテルスキーはその模様を指した。ステパンは髭面を動かして頷く。……中に、ステパンの会話の力で判断してだろう、片仮名で、