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うらぎり
裏切り
「新潮 第五一巻第九号」1954(昭和29)年9月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 35,343 字 · 70 页
人目がなければまさに新聞を押しいただいたに相違ありません。
小夜子サンを東京へ連れて戻ったトオサンは、ウチへ当分かくまうことにしました。そのころウチにはナギナタ二段という女中がいて、これが自分のアパートで隣人とケンカのあげく隣人の男子の方を階段から突き落すようなことをやったものですからホトボリのさめるまでアパートへ帰らないことにしてウチの座敷に寝泊りしていたのです。小夜子サンはこの二段と同居ですから我々も安心でした。しかしフカのようによく眠る二段ですから、トオサンはかえってたよりながっていたようです。
ある日の午後、小夜子サンの亭主の小坂信二が女房をさがしてきましたが、それは熱海心中から十日ほどすぎてのことでした。幸い小夜子サンは店先にいませんでしたが、彼の訪れを知った時のトオサンの形相はすさまじいものがありました。彼は店先へとびだして、相手の顔もよく見ないうちから怒鳴っていました。
「十日もすぎてから女房をさがしにくるとは何事だ! そんな風だから女房がよその男と心中することになるんだぞ。たとえ女房がよその男と心中して生き返っても風のように飛んでいって介抱するのが亭主のツトメだ。