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うらぎり

裏切り

坂口 安吾

「新潮 第五一巻第九号」1954(昭和29)年9月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 35,343 字 · 70 页

青空文庫

「そうねえ。ひどすぎたかも知れないわ。私、愛情の表現を知らないのです。仕方がないから、手ッ取りばやく、処女を自由にしてなんて云ったんですけど、私だって肉体のことなんか考えていないわ。ただ本当に好きなんです。トオサンの目も手も口も心も、みんないとしくて、たまらないわ。毎日、まるで格闘しているような気持なんです。それを云いたかっただけなの」

「若い時には魔がさすことがあるものだ。気まぐれというわけでもなかろうが、ひょッと変テコな入道雲みたいのものがニジかなんかに見えやがってさ。若い男がおッ母さんのような女に変な気持になることがよくあるものだ。こいつにマトモに気を入れると一生のマチガイになる。一時の迷いなんだよ。な、若い者は若い者同士だ。当り前じゃないか。日野サンがだいぶあなたにあついようだが」

「あんな子供、きらいです」

「子供ッて、あなたも子供じゃないか」

「私が子供だから、あの人の子供ッぽいのがたまらなくイヤなのかも知れないわ。子供は子供同士ッて、どういう意味でしょう。似た者同士はイヤなものだわ。鼻につくんですもの。子供のくせに変にスレッカラシのところまで似てたら、やりきれないのは当然です。