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うらぎり
裏切り
「新潮 第五一巻第九号」1954(昭和29)年9月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 35,343 字 · 70 页
日野のほめ方が気に入らなかったのかも知れません。とにかくぼくは日野の言動にはことごとくと云ってよいほど反感をもちたくなってしまうのです。ニセ貴族を仕立てての誘拐の件で法本の小夜子サンへの下心を知り反感の火の手が何層倍も強まったところへ、花束をもっての小夜子サン帰京見舞の一件があってぼくの反感は決定的になりました。つまり彼がぼくを警戒しだしたのと同じころからぼくの方がその何倍も彼を敵に見立てていたのですが、日野にはその色を見せないように注意するのを忘れませんでした。もっともぼくも法本がセラダにギャングを働かせそのセラダを殺害して自殺に見せかける計画をたくらんでいることなどは知る由もなかったのです。
二週間ほどすぎて、セラダは再び毎日のように通うようになりました。おどろいたことには、金も乏しいくせに、二三日目にはまた自動車をブーブー鳴らしてやって来ました。セラダは貴金属類を百八十万円で法本に売った金の三分の二で自動車を買ったもののようです。奴の度胸のよいのにはおどろくほかありませんが、彼が自動車を持たない時の劣等感は特殊なものがあったのかも知れません。