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はだかぎ

裸木

豊島 与志雄

「新潮」1926(大正15)年9月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,049 字 · 33 页

青空文庫

」

「精神的にだって、肉体的にだって、赤ん坊にとっちゃ同じじゃないか。つまらない解釈なんかつけるから、変なものになっちまうんだ。」

云ってるうちに佐野は突然腹が立ってきた。何物とも知れないものが、胸の底で湧き立ってきた。

「別に解釈をつけ加えるってわけじゃないが……。全く分らない世界なんだからね。」

「分るも分らないもない、ありのままの世界だよ。」

暫く黙ってた後で、佐野は敏子を呼んだ。

「え、なあに……。」

「坊やを連れてきてごらん。」

「まあー、どうして……。今眠ってるじゃありませんか。」

「いいんですよ、ほんとに、そんなことをしなくたって……。」

「一体どうなすったの。」

「なに、どうでもいいことなんです。」

武田と敏子とからじっと見られて、佐野は一寸心の置き場に迷った。

「君が変なことを云い出すものだから、実地に証明してやろうと思ったんだが……。」

「君の方だよ、変なことを云い出したのは。」

「変じゃない。ありのままじゃないか。」

「一体何のことなの、それは……。」

敏子は不思議そうに二人の顔を見比べた。

「赤ん坊の世界が……何だったかな……。」

佐野にも一寸何だか分らなくなっていた。